| スカパーのアニメ専門チャンネル「アニマックス」で機動戦士Ｖガンダムを何度もリピートしていた。Ｖガンダムは１９９１年でしたっけ？ 本放送当時は私のアパートの受信状態が極めて悪くて、あんまり見る気になれなかったんだよねえ。で、今回見直してみて、「う〜む、こ、これは・・・」と唸ってしまった。前半ドラマがゴチャゴチャしすぎてて、何が何だかよく解らない話だが後半になると徐々に面白くなり富野監督得意の凄い展開が爆発する。 一言で言えば、敵も味方もドロドロ状態。末期症状とでも言いましょうか。双方とも良かれと思ってやっているのだが、多くが裏目の結果に。何をやってもダメ。泥沼の中から外に出ようともがいているのだが、もがいてももがいても脱出できない・・・。そんな感じ。 例えば、味方側は最初「地球上で核爆発を起こすわけにはいかない！」とか言っていたはずなのに、敵の進撃を止める為に核爆発を何度も使ってしまうとか。 敵側が「ウッソ君（主人公の少年）は生身の人間を殺せないはずだ」と考えて、ビキニ姿の若い女性ばかりで構成した部隊で、生身のままでガンダムに攻撃を仕掛けるという、何とも世も末な作戦を考案。が、主人公は混乱しながらもビキニのお姉さんたちを皆殺しにしてしまうとか。（ビームサーベルで生身の人間を焼き殺すシーンがショッキング！） 主人公が文通して憧れていた美人のお姉さんが敵に回っていて、しかも極めて残忍・凶悪な性格の持ち主になっていて、主人公に「あなたに慕われて嬉しかったわ」とか言って改心するフリをして主人公に抱きついて、背中にナイフをグサッと刺し「甘いよねえ、坊や！」とか、 最後のあたりで「人間の心を操る装置」というのが登場するのだが、主人公側のヒロインがこれを使ってみんなに戦争をやめるように祈りを発信するのだけど、実はこの装置はヒロインが思っているような装置ではなくて、人間の精神を幼児化させて永遠に眠らせるという恐ろしい装置であり、ヒロインが祈った結果、ヨーロッパあたりで人間や動物が大量に死んでしまう、とか（人間から闘争本能が無くなるという事は、精神が無垢な幼児になるという事であり、永遠に眠り続けるため死んでしまう、という事らしい）。 この他、ヒロイン本人は良かれと思ってやっているのだが、その行動によってどんどん話がこじれるとか。敵も味方もやる事なす事がドロドロ。人間はどうしてこうまで憎しみ合わなければならないのだろう？ もう人間の戦争も行き着く所まで行っちゃったなあ、という感じ。 また、最初のガンダムでは地球連邦軍とジオン公国軍という大きな国家同士の戦争という図式がはっきりしていたのだけど、Ｖガンダムの時代では地球連邦が組織としてあまり力が無いようで、地球全体がメチャメチャにされそうなせっぱ詰まった状況なのに、実際に戦っているのは民間組織的な団体という点も末期的な感じ。まあ、もちろん最後には味方が勝つんだけど、「正義が勝って良かったね」みたいな単純に喜べる終わり方でないのは言うまでもない。 富野監督が作った作品世界は「機動戦士ガンダム」→「機動戦士Ｚガンダム」→「機動戦士ガンダムＺＺ」→「機動戦士ガンダム・逆襲のシャア」→「機動戦士ガンダム・Ｆ９１」→「機動戦士Ｖガンダム」という具合に劇中の年代にして７０〜８０年くらい続いているのだけど、どこまで行っても戦争ばかり。毎回、未来への（わずかな）希望をちらつかせつつ、でも「結局人間はどこまで行っても変わらない」という感じ。 さて、Ｖガンダムの後で作られた「∀（ターンエー）ガンダム」は、Ｖガンダムから見て遙か数千年の未来らしい。世界が最初からかなり平和であり、戦争にはなるものの戦争中でも平和を求める動きが強く描写され、最終的には本当に平和になって終わる。しかもその平和は、主人公たちの強い使命感責任感による捨て身の努力の上で成し遂げられる。・・・これはＶガンダム世界の住人から見たら夢のような世界でしょう。こんな幸せな世界があったらいいなあ、という世界でしょう。 ∀ガンダムの世界では、ガンダムなどで宇宙戦争をしていた昔の文明は滅びたという事になっている。つまりＶガンダムの世界はあの最終回の後、どのくらい後かは判らないけれど結局滅びたという事になっている。で、∀ガンダムを見た後であらためてＶガンダムを見るとそのドロドロ具合から、「これは滅びるわなあ・・・」と妙に納得してしまう。もしかしたら∀ガンダムは、Ｖガンダムの世界の人が夢に見たお話なのかもしれないなあ？・・・なんて、ちょっとダークな想像までしちゃいました。 【ニュータイプについて】 Ｆ９１あたりまでは「ニュータイプ→人の革新」という図式が背景にあって、「そのうち人間は次の段階（ニュータイプ）に進化して、みんな解り合えるようになるから戦争が無くなるはず」みたいな理想的希望が描かれていた。これについては、私は初代ガンダムの頃からイマイチ納得できなかった。嘘くさいというか、ご都合主義に思えた。だって敵側にもニュータイプが出てきて、ニュータイプ同士で戦争してるんだから結局何も変わってない。まあ、劇中でも「人がそんなに便利になれる訳ない・・・」とか否定的なセリフもあったから、監督一流の方便だったのかも。 その当時私の兄もガンダムファンだったのだが、ニュータイプについては「アムロなんかよりも『未来少年コナン』に出てくるコナンの方が本当のニュータイプだと思う」などと発言し、私も「なるほどなあ」と思ったものだった。 Ｖガンダムでは（それっぽい描写はあったけど）もうニュータイプという話はほとんど出てこなくなり、さらに∀ガンダムでは全くそのような描写が無くなり、シリーズ恒例の「死んでいった仲間たちが最後にチカラを貸してくれる」みたいな描写もなかった。 これでいいんだと思う。∀ガンダムのこういうあたりが「富野監督、本気だな」と感じられた。つまり結局のところ、時代を切り開いていくのは生身の人間。個人個人の努力によるほかはなく、人類の革新とかニュータイプとかの理想の話、うまい話に頼ってはいけないという事がビシビシ伝わって来る。現実問題として個人は結局の所「今やれる事」をやるしかない。またそういう事は理屈としては判っているはず。問題はその「やれる事」を実際にやるかどうかっつー事なんだよな。 結論： 観よう！ 「∀ガンダム」！！(^^; |
| [2002/03/17] |
