| 魔法少女隊アルス（ＮＨＫ教育） ＮＨＫ教育の夕方放送子供向けバラエティ「天才ビットくん」の中で放送されている連続アニメ。 「天才ビットくん」自体は小学生（中〜高学年）を対象としたバラエティ番組で、その中でアニメを放送する事は別に不思議でも何でも無いのだが、この「魔法少女隊アルス」、見てみたら普通のアニメじゃなかった。まず、原作＝雨宮慶太（東映特撮ヒーローもののデザインや監督で有名）という所からして尋常じゃない。 で、アニメを制作しているのが「スタジオ４℃」という制作スタジオ。このスタジオは知る人ぞ知る実力派スタジオ。日本を代表するアニメ制作スタジオと言えば、スタジオジブリ、プロダクションＩＧ、マッドハウス、などが有名だが、この「スタジオ４℃」もその作品の出来の良さによって海外でもその名を知られているという。 有名な所では、オムニバスアニメ映画「MEMORIES」。これの「彼女の想いで」というエピソードがここの制作で、これは今見ても全然色あせていない傑作だ。最近では「アニマトリックス」のアニメパートも制作したという。 そんなスタジオ４℃が制作しただけあって、この「魔法少女隊アルス」も普通じゃなかった。制作方法はアフレコ方式ではなくて、先に声優の演技を録って、後から絵を作るという異例の方法で作られているそうだ。 ストーリーもちょっと普通じゃなくて、子供に見せるには難しすぎるんじゃないか？というような感じの内容に思えた。なんちゅうか、その、理屈っぽいのだ。まるで深夜放送枠のオタク向けアニメみたいだ。アニメの出来は良くても、視聴対象に合ってないような気がするのは俺だけだろうか？ 「まぶらほ」（ＷＯＷＯＷ） このアニメは昨年秋の番組だけど、遅ればせながら書きます。（記事は昨年秋に書いていたのだけど、すっかり忘れてた(^^;） 主人公の所に突然可愛い女の子がやってきて、他にも主人公を狙っているライバル美少女が押し掛けてくるという、近年よくあるタイプの学園ラブコメアニメ。 問題なのは、女の子たちが主人公に迫る理由が、「主人公の遺伝子が欲しいから」という事。 一見、現代日本とそっくりだけど、この世界ではみんな魔法を使えて、学校の必修科目に「魔法」ある。強い魔法を使える者が偉いという世界らしいのだが、魔法の才能は遺伝で決まっているらしい。 主人公自身はさえない落ちこぼれ君なんだけど、遺伝の素質的には世界最高クラスであるという事で、彼と一発ヤッちゃって、超優秀な子供を作ろうと考える女子（大財閥の令嬢とか、由緒正しい名家の娘とか）が押し掛けてくる。あうあうあう(^^;;;; そんな直接的な理由を持ち出してもよいのでしょうか？ そして、そんな理由でモテてもあんまり嬉しくないのではないでしょうか。（実際、主人公はかなり辛そうだ） まあ、男の本能的には「そんなに俺の子供が欲しいなら、いくらでも仕込んでやるぜ！」と、希望する女子全員に自分の子供を産んでもらいたい所だが、そこはそれ「生涯を誓っう伴侶はただひとり」という純愛路線ドラマでもあるので、なかなか上手くいかない。 登場するキャラは、どこかで見たような典型的なキャラが目立つが、まあそこそこ楽しい。でもホント、最近はこんなアニメばっかりになっちゃったなあ。これでいいのだろうか・・・。 「千年女優」（２００２年、千年女優製作委員会） 「パーフェクトブルー」でデビューした今敏（こん・さとし）監督の映画第２作目。この「千年女優」も「パーフェクトブルー」と同じく、回想シーン、幻想シーン、イメージシーンが現実に入り混じった構成になっている。 この混ぜ込み具合が非常に巧い。っつーか、うらやましいと思った。俺もこういう映画が撮りたかったなあ・・・と。 ストーリーとしては、「往年の大女優が自分の半生を語る」という話なのだけど、女学生だった頃から白髪のお婆ちゃんになっても彼女が魅力的に描かれている点が肝ね。見ているこっちの方まで「私も昔からファンだったんですよ」と思っちゃうような、そんな実際にいそうな往年の清純派女優ね。例えば八千草薫とか・・・。 各所のアクションシーンや、キャラクターの演技も巧いし。一流のスタッフが作った一流の映画だと思う。世間ではスタジオジブリ系アニメをもてはやしているけど、昔からのマニアならこっちの方にも注目だぞ。 なおこの今敏監督、出身はマンガ家。以前、押井守原作のマンガをアニメージュに連載していた事もある。この話を聞いて初めて「ああ、あのマンガの人か！」と合点がいった。 で、そんな今敏監督が手がけたオリジナルシリーズアニメが登場。「妄想代理人」。 「妄想代理人」（ＷＯＷＯＷ） ＷＯＷＯＷの深夜枠で放送。もうオープニングからヤバいイメージをちりばめたアニメ。 夜道、金属バットを持った少年（？）が人を襲うという事件が発生。犯人は「少年バット」と名付けられ、その正体について噂が噂を呼ぶ。 精神的に追いつめられた人の所にどこからともなく現れて、バットで殴る事で結果的にその人を苦しみから解放してあげている（？）という展開に、この番組の放送当時、リアルで精神的に追いつめられていた俺は、このアニメを複雑な心境で見続けたのだった。（その後、療養のため長期休業する事になったワケだが） ある回のラストで、 「休みなよ・・・」 「休みなよ・・・」 「休みなよ・・・」 というセリフがリフレインするシーンなんかでは、本当に「俺、やっぱり休んだ方がいいのかなぁ・・・」と真剣に悩んでしまった。 少年バット自体が「少年による傷害・殺人」という話であって、それだけでも十分ヤバいのに、自殺願望を持つ人がネットで知り合い、一緒に自殺しに行くという話なんかがあってもうマジヤバ。ネットで知り合った自殺願望者が話題になったのはつい最近でしょう？ それも小学生が自殺しに来るなんてねえ。「こんなの放送しても大丈夫なの？」という感じ。 この「妄想代理人」。この他にも２重人格の美女の話がヤバかった。昼は清楚でおとなしい女性だが、夜は風俗店で男の性処理相手をしているケバケバしいい女。この夜の人格から昼の人格に留守番電話を使って連絡が入るという話。 どこがヤバいって、風俗店で男の相手をしている描写が出てくる所ね。それもいかにもなオタク男を相手にしてて、ベッドの周りにたくさんの美少女フィギュアを並べてのアヘアヘ行為。もう見ているこっちが「ぐわあ！！ヤメテーー！！」って感じだった。凄いアニメだけど、子供には絶対に見せられないなぁ。 「銀河鉄道の夜」（１９８５年、朝日新聞社・テレビ朝日・日本ヘラルド映画グループ） コクーンが勝手に録った番組の中に、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のアニメ映画があった。原作は、擬人化した猫のキャラで有名なますむらひろし氏のマンガ。 以前はこの人の猫キャラマンガがあんまり好きではなかったので、この映画の事もあんまり気にしていなかったのだが、今になって観ると、この擬人化した猫に演じさせるという事が、あの不可思議で国籍不明な雰囲気・・・普通の世界とは違うどこか夢の中のような雰囲気を出すので有利に働いていて、これが正解だという気がした。 人間のキャラで描かれたドラマ・演劇も数多くあるだろうが、あの雰囲気を出すのはかなり難しいのではないだろうか・・・。 ますむらひろし氏のマンガ版を読むと、もうあっけないほどに淡々と原作をなぞっている感じで、絵としても、悪く言えば素朴で同人誌的なシンプルな絵。しかしそこがまた、読む者のイメージを増幅させる方向に働いているように感じられていた。 アニメ版ではこれに細かい脚色演出が付け加えられており、それはそれで悪くはないのだけど、ちょっと派手過ぎなようにも感じられた。 まず気になったのが、主人公が銀河鉄道に乗り込むシーン。 原作では、「気が付いたら座席に座っていて、自分がいつどこから乗ってきたのかもよくわからない」というような描き方になっている。が、アニメでは劇的に蒸気機関車が登場し、迫力ある演出になっている。 我々が実際にみる夢では場面転換に脈絡が無いのと同じように、ここのシーンは、本来は静かにサッと何気なく切り替わるべきシーンだと思うのだが、「迫力ある見せ場」として演出されているのはちょっと違うんじゃないかなぁ？と思った。 そしてもうひとつ気になったのは終盤、カンパネルラがいなくなってしまうシーン。 ここは「カンパネルラが本当はもう死んでいる」という事が象徴されている重要なシーン。原作でも、カンパネルラがいなくなってしまった事に気が付いて、ジョバンニが叫んでしまう事になっている。アニメでもそれはその通りなのだけど、アニメではここにかける描写と時間が長く、かなり劇的な演出になっている。 俺としてはもうちょっと抑えた演出にした方が良かったのでは？と思った。 親しい人が死んでしまった時、その場でいきなり大声で泣くような事は普通しないと思う。その時は呆然、あるいは平然としているが、後になってからグワッと感情が吹き上がってきて涙が止まらなくなったりするものだ。俺だったら、この別れのシーンはあっさり済ませて、後で泣く演出にする・・・。 名作と呼んでよい映画だと思うけど、ちょっと違和感があった点について敢えてシロウトの戯言を並べてみました。 ところで、俺が高校の頃、地学の先生で板谷先生という人がいた。この人の授業はいつも脱線に次ぐ脱線で、まともに地学の勉強になった事なんか一度も無かったんじゃないか？というくらいの変わった先生だった。 でも、その脱線時に話してくれるお話がとても面白かったので生徒からは人気があった。でもおかげで俺たちの学年の地学のレベルはかなり低いものとなったはずだが・・・。 で、この板谷先生は自他共に認める宮沢賢治ファンで、後に、ＮＨＫで宮沢賢治の特集番組をやった時にも出演していたくらいの人なのだ。だから脱線時も宮沢賢治ネタの話が多かった。 調べてみると、宮沢賢治研究家として板谷栄城という人が有名である事がわかった。これがあの板谷先生と同じ人かどうかとても気になって、更に詳しく調べてみた。そしたら顔写真のあるページを発見。それは、老けてはいたが確かにあの板谷先生だった！！ 高校では化学や地学の先生だったけど、今は盛岡でオーケストラを主宰していて、宮沢賢治研究の本も多数出しているそうだ。 そんな板谷先生をきっかけに知った宮沢賢治の世界だけれども、高校当時はまだまだガキだった事もあって、「銀河鉄道の夜」もいまひとつピンと来なかった。 が、今、自分の友人や親戚、両親などの死を経験した後に読むと、この「銀河鉄道の夜」は心にズシリと来るのだなあ・・・これが。この小説は単なる童話ではなく、そういう類の小説なのだ。 宮沢賢治は最愛の妹の死の悲しみを癒す旅で樺太鉄道に乗る旅行に出たのだそうだが、その鉄道での旅のイメージから「銀河鉄道の夜」を書いたという説がある。 俺は、親父が危篤になったあの夜、家族の中では唯一死に際に立ち会えた。親父が死んで、開きっ放しのまぶたを指で閉じさせ、病院の待合室に戻って窓の外を見るともう明け方。 季節は白鳥が北に帰る頃で、俺はその白鳥の背中に親父が乗って、北の故郷に飛んで行くイメージが浮かんで、無性に泣けてきた。このイメージは、「銀河鉄道の夜」の中の、死者が銀河鉄道に乗って天上に向かうというイメージに重なるのだ。 |
| [2004/7/27] |
