| フジテレビの深夜枠で放送されていたアニメ「ラーゼフォン」の劇場版。 「ラーゼフォン」自体、そのスタッフの豪華さから雑誌アニメージュでは放送前から「名作保証」などと書かれていた。が、テイストが「エヴァンゲリオン」に似ているという事や、深夜枠で放送時間が不安定だったせいか、放送中や放送後はあんまり話題にならなかった作品。俺は、劇場版を見るまではテレビ版を一度も観ていなかった。つまり最初に観たのがこの「劇場版」。 確かにエヴァンゲリオン風味の複雑なドラマ展開。パラレルワールドにある「ムー」からの侵略。「勇者ライディーン」を彷彿とさせるラーゼフォンのデザイン。血が青くなる（→「ブルークリスマス」）。東京が巨大な壁で覆わてしまう（→「首都消失」）。・・・などなど、どこかで観たような要素が多いドラマ。これらの点だけでも拒否反応が出る人がいるかもしれない。 だが俺はこの映画を少なくとも５回は繰り返し観てしまった。それどころかＤＶＤ（初回限定版）まで買ってしまった。それまで１作品もＤＶＤを買った事が無かったのに、この映画だけは買ってしまったのだ。オリジナルサントラのＣＤも買ったし、関連書籍も買った。 音楽が重要な要素になっているドラマなので、音楽が凝っている。サントラＣＤも何度も何度も聴いた。音楽担当は知る人ぞ知る橋本一子。俺は彼女の音楽に強く惹かれ、橋本一子関係のＣＤも３枚ほど買いあさってしまった。そうまでするほどハマってしまったのだ。 また、橋本一子は声優として主人公の母親の声も演じているのだが、その声の存在感も大きな魅力。初めて観る人は、この母親役の声だけでも「おや？」と思うのではないだろうか？ 俺の場合この母親役の声で、まずピクっと来てしまった。「これは普通じゃないぞ」と。 そして、劇中何度か繰り返される「鏡の国のアリス」の最後に出てくる詩。 不思議なる 国をさまよい 長き日を 夢見て暮らす つかのまの 夏は果てるまで 金色の 夕映えのなか どこまでも たゆたいゆかん 人の世は 夢にあらずや・・・ この詩がいい！ 劇にピッタリ合っていて、また音楽とも相まって非常に感動的。おかげで書店に走って「鏡の国のアリス」を探してしまった。 でも日本語に訳した人によってこの詩がだいぶ異なるので、上の詩そのものが出てくる本をなかなか見つけられなかった。さんざん探し回った結果、岩波少年文庫版（脇明子訳）がそれだという事を突き止め、ようやく購入した。 てなワケで、テレビ版を観ずに大ハマリしてしまった俺なのだった。（コンパクトにまとまっている分だけテレビ版よりも良いかも） （あらすじ） ある日突然東京が巨大な半球状の壁に覆われ、全ての連絡が取れなくなる。 壁の外側ではこれは異世界「ムー」からの侵略だとされるが、壁の内側では「外側の世界はインベーダーの侵略で全部滅びてしまった」と知らされている。 その時壁の内側にいた主人公は、何かに惹かれるように、巨大な卵から生まれた「ラーゼフォン」に乗り込み、成り行き上「ムー」と戦う事になる。しかし、主人公の母親は実はムーの最高指導者で、自分自身もムーの人間（ムーリアン＝血が青い）であるという事を知り、苦しむ事になる。（生まれた時から青い訳ではなくて、思春期あたりになると血が青くなりそれまでの記憶を無くしてしまうらしい） これは人類とムーの存亡を賭けた戦いなのだが、戦いのカギを握っていたのは主人公とは相思相愛の彼女だった。 年月が経っても少しも変わらない恋いこがれる気持ち。２人で一緒に歳を取る。おじいさんとおばあさんになるまでそんな２人でいたい・・・。そういう２人が、観ているこっちが気恥ずかしくなるくらい純粋に描かれている。「ああ、こんな純な恋愛が本当にあったらいいなあ」。このテーマがエヴァンゲリオンと違って爽やかであるため、見終わった後、清々しい気持ちになれる。 【ブルークリスマス】 血が青くなると言えば「ブルークリスマス」を思い出さずにはいられない。 「ブルークリスマス」は、「スターウォーズ」や「未知との遭遇」でにわかにＳＦ映画が盛り上がった１９７８年に公開された日本のＳＦ映画。 他のＳＦ映画が派手で大がかりな特撮を売りにしたのに対して、「特撮は使わない」という正反対路線を選び、監督：岡本喜八、脚本：倉本聰という本格ドラマ路線で製作された。 （あらすじ） 世界中でＵＦＯが頻繁に目撃されるようになり、ＵＦＯと遭遇した人間は血が青くなっているという事件が起こる。ただしこれは世界的に極秘事項とされ、事実は隠蔽される。 正体も目的も不明なモノに対する疑心暗鬼が、血が青くなった人たちに対する恐怖を生み、全世界的な謀略へと発展。最終的には、「青い血の人間たちは我々人類に対して反乱を起こそうとしていた」という大義名分（欺瞞）をもって、彼らへの大虐殺（ホロコースト）が敢行される。クリスマスイブ、世界同時で行われる大虐殺シーンが非常に怖い。 何と言いましょうか、夢も希望も無いような、暗ぁ〜い気分にさせられる映画でした。私は当時この映画を封切館で観たのだけれど、見終わった直後は席から立つ事も出来ないくらいショックを受けてしまいました。 「スターウォーズ」や「未知との遭遇」に対して、特撮ではなくてドラマで勝負、という路線は正解だったと思うのだけれど、内容が内容だけにカルト映画みたいになっちゃったのが惜しまれる。 |
| [2005/03/02] |
