| 【ウルフズレイン】 絶滅したと思われていたオオカミは、実は生きていた。ヤツらは人間に化ける事ができ、人間世界に紛れ込んで生き延びていたのだ。そしてヤツらの間には、この世界のどこかに「楽園」があるという伝説が伝わっていた・・・。 最初この粗筋を聞いた時には「はぁ？オオカミが人間に化ける？」てな感じで、いまいちピンと来なかったんだけど、第１話から観たらもうズッポリはまってしまった。あの「カウボーイ・ビバップ」のスタッフが作っただけあって、非常に完成度高し。 原作脚本の信本敬子氏は、「カウボーイ・ビバップ」でもそうだったけど、孤独に生きる男の生きざま（ハードボイルド）が得意なのね。ウルフズレインもその路線。 音楽担当は今や「日本のアニメ音楽」の顔とも言える菅野よう子氏。今作も非常に良い曲だ。どうしてこんなに次から次へと曲が作れるのか不思議なくらいだ。これが天才ってヤツなんだろうな。 さすらう若いオオカミ４人組、キバ、ツメ、ヒゲ、トオボエ、らは一体どこに行くのだろうか？ 楽園は本当に存在するのだろうか？ そして「月の花」や「貴族」「花の少女」「楽園病」などなど、ミステリアスな要素が次々に絡まる。渋くて幻想的な雰囲気が何とも言えず良い。 【キノの旅】 数年前にＷＯＷＯＷで放送したアニメだが、当時は全く注目していなかったので、１本も観なかった。が、先日スカパーのアニメ専門チャンネルでやったのをコクーンが勝手に録ったので、ちょっと観てみた。そしたらビックリ。かなり面白い、というか興味深い内容だった。 ストーリーは、キノという少女（外見やふるまいは少年っぽい）と人の言葉を話すバイクが様々な国を旅して回るという物。 それぞれの物語は寓話的で、まるで宮沢賢治の童話集のようだ。が、キノがいわゆる「普通の人」というワケでもなくて、拳銃やナイフをたくさん隠し持っていて、いざとなれば躊躇無く相手を撃ち殺す事もある（それもかなりの凄腕）。 物語としての完成度はかなり高く、見終わった後、考えさせられる話が多い。「こんな話を書ける人が日本にもまだ居たんだなぁ・・・」などと、失礼かつ偉そうな感想を覚えてしまった。 （第１話） 今回キノが訪れた国は誰もいない国だった。全ての仕事が機械で済まされているかのようだ。 「いっそこの国にとどまって、王様にでもなるかい？」 しかし望遠鏡で街をよくよく観察してみると、ちゃんと人は住んでいるという事が判った。ただ、誰も出歩かないし、他人と会わないようにしているだけなのだ。偶然出会ってしまった住人のひとりから、ようやく話を聞く事ができた。その人の話によると、この国では昔、 「人間同士は決して解り合えない。それは言葉だけでは 考えている事の全てが伝わらないからだ」 と考え、言葉を使わなくても考えている事が他人に伝わる「液体機械」という物が発明されたのだ。これさえ飲めば、誰とでも全て解り合える。そうすれば争い事などなくなるはず・・・。そう考えて国民全員がこの液体機械を一斉に飲んだのだそうな。 が、しかし結果は逆だった。知らなかった方が良かった事まで知られてしまうし、知ってしまうため、結局、誰もが誰とも会わないようになってしまったのだ。おかげでこの国では誰もが独り暮らしになり、結婚しなくなり、子供も生まれなくなったのだという。 そしてキノは次の国を目指してまた旅に出たのだった。 【東京ゴッドファーザーズ】 「千年女優」「妄想代理人」ですっかり有名になった今敏監督のアニメ映画（２００３年）。 東京のホームレス３人組（ヒゲ親父、オカマ、女子高生（？））の奇妙な共同生活。そしてクリスマスイブに偶然見つけた捨てられた赤ん坊。 ３人は赤ん坊を捨てた親を捜し回るが、ひょんな事から捨てたはずの自分の過去に繋がったり、意外な展開に振り回されたり。日本版「ニューヨーク３４丁目の奇跡」みたいなハートウォーミングストーリー。派手に売れる事は無いと思うけど、じんわり楽しめるお勧めの映画、と言った所か。 【アリーテ姫】 往年の東映動画アニメ映画のような絵柄の「童話風」アニメ映画（２００１年）。その見た目の雰囲気から普通の子供向け映画なのだろうと思って観ると、意外な内容にちょっと驚かされる。 塔の上に隔離され、ふさわしい男性が現れるのを待っている（とされている）アリーテ姫だが、姫は言い寄るナイト気取りの男たちのウソを全て見抜いてしまう。そんな時、突然現れた魔法使いにさらわれたアリーテ姫。姫は魔法使いの城の地下室に閉じこめられてしまうが・・・。 魔法使い達が住んでいた高度な文明世界はとうの昔に滅び去り、僅かに生き残った者が（来るはずのない）仲間たちを待っている。一見万能とも思える魔法だが、実は大昔の科学文明が作り出した技術の産物で、魔法使い自身が何でも出来る訳ではないのだった。（「十分に進歩した科学技術は魔法と見分けが付かない」と言ったのはＡ．Ｃ．クラークだったっけ？） 幽閉されたアリーテ姫も、いつか白馬の王子が助けに来ると思って（思わされて）いたが、それは実は魔法使いと同じく虚しい事なのだと気が付くのだった。 知る人ぞ知る「スタジオ４℃」が製作しただけあって、ただの童話では終わっていない。この映画が語っている結論は、かなり深いものがあって、一度観ただけでは語れない、噛みしめ甲斐のある作品だ。そしてこれはむしろ大人向けの映画なのではないか？とも思った。 それにしても、俺、この映画の事、名前も聞いた事なかった。これだけ上質なアニメ映画をいつの間に作っていたんだ？ 公開から３年以上経ってるのに知られていないという事は、ほとんど話題にならなかったという事だよなあ。まあ見た目が凄く地味だからなぁ。もったいないなぁ・・・。 【小麦ちゃんマジカルて】 小麦ちゃんという魔法少女が、悪のウィルス（？）が。巻き起こす事件と闘うという、よくあるパターンの魔法少女系アニメ。と言うか、「よくあるパターンの魔法少女モノ」のパロディ。 問題なのは、ドラマの舞台がどれもオタク系（２ちゃんねるとか秋葉原とか東京ビッグサイトとか）で、出てくるキャラもオタク系ばっかし。第１話では、２ちゃんねるで有名な「モナー」「８頭身モナー」「モウコネエヨ」「おにぎりワッショイ」などが登場してビックリ。 最初っからオタクだけを狙っている。アニメ制作がネタになった回では思いっきり内輪ネタで、アニメオタクじゃないと笑い所がわからないというくらい。正直、そんなに面白いアニメではないけれど、悪くもない。オタクの今を象徴したようなアニメだとは言えるな・・・。 【鉄人２８号】 実写映画の方ではなくて、新作アニメとして作られた方。 原作に忠実なキャラ（当時の横山光輝タッチ）や、昭和３０年代を強調した舞台設定など、昔からのファンの期待を裏切らない出来に仕上がっている。ストーリーはオリジナルだが、原作の味を損なっていない。 戦争が残した忌まわしい遺産、鉄人２８号。そして葬り去られたと思われていた「鉄人第二計画」とは何か？ 本来、戦争とは無関係の金田少年が、忌まわしい戦争の記憶を発掘してしまい苦しむ様がけっこうリアル。鉄人はこれまで３度アニメ化されているが、一番良い出来だと思う。 「善いも悪いもリモコンしだい」という歌詞が、今にしてみれば国と軍隊の関係を語っているように思え、「もう戦争はこりごりだ」という当時の心境を物語っているようだ。 |
| [2005/07/02] |
