| 【河童のクゥと夏休み】 ご存知、２００７年夏の名作アニメ映画。 文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞受賞、キネマ旬報ベストテン入り。実際に観た人からの評価はとても高かったが、大ヒット！・・・とまでは行かなかった、そんな「隠れた名作」。 ここら辺は、元々地味な内容である事と、予告編等の前宣伝が「そのまんま」というか、当たり前な内容すぎて、「これは見なくては！」という気にさせてもらえなかったのが原因じゃないかと俺は見ている。  最近ＣＳで放送されたのを観て、その丁寧な作りにあらためて感動し、関連書籍を購入。「原恵一と『河童』の長い旅」(右の写真） 「河童のクゥと夏休み」のバックグラウンドや、原監督が描きたかった事がよく分かる一冊。 このお話の企画は、監督：原恵一がまだ一介の演出マンだった２０年ほど前から温めていたもので、どうしても作りたいアニメだったという。 自分が作らなければならないアニメは何か？という所から始まって、原作の童話を見つけて作者に会いに行ったり、「エニックスアニメ大賞」に応募したり・・・。 なかなか実現しなかったけど、その後同氏が監督した映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ！オトナ帝国の逆襲」「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ！戦国大合戦」が高い評価を得た事で、やっと「河童」の企画が動き出したという。 う〜ん。そこまで深い思い入れのある作品だったとは。やっぱそこら辺が映画の丁寧な内容として形になってるんだな・・・。 映画に感動した人は、買って損無しの一冊。 |
 ちなみに、これとは別に映画の絵コンテがそのまま一冊の本になっている（左の写真）。とても分厚い本で、映画化の際にカットされたシーンも含めた絵コンテを、そのまままとめたという内容。こんな本を買う人がそうそういるとは思えないが、本として発行した会社には感謝だ。 |
【電脳コイル】 上の「河童のクゥと夏休み」もそうだけど、監督自らが「俺はこれを作りたいんだ！」「これを完成させるまでは！」と思って作った作品は、やっぱりその熱意が見る者に伝わる。 ２００７年にＮＨＫで放送されたアニメシリーズ「電脳コイル」もそんなアニメだ。 どこか懐かしく、ちょっと怖いような、そんな雰囲気を漂わせる少年少女ドラマ。それでいて攻殻機動隊ばりの本格的な電脳世界描写。 最後まで妥協しない、丁寧な作りは「河童のクゥと夏休み」と一脈通じる物を感じさせる。 劇中には「キラバグ」「メタバグ」「オートマトン」「イリーガル」「イマーゴ」「古い空間」などなど、不思議な用語がたくさん登場するが、その意味はあまり詳しくは説明されない。「だいたいこんな意味だろうなぁ」と思いながら話を見続ける。そんな謎を残した見方ができる所も魅力のひとつであった。 が、「あの言葉は、実際の所どういう意味だったのだろう？」と思う人も多かったのではないか。そんな疑問に答えてくれる一冊が「ロマンアルバム・電脳コイル」。ロマンアルバムと言えば、アニメムックとして３０年近く前から発行されている老舗的存在。今でも続いていたんだなぁ〜。 この本を読むと、原作・脚本・監督を務めた磯光雄のこだわりと想いがよく分かる。  またこれとは別に、磯光雄が２０００年に書き上げた企画書が書籍になっている。「電脳コイル・企画書」（右の写真）。アニメ化されたものよりもクセの強い内容だが、「電脳コイル」の起源を知る上でとても貴重な資料だ。 もし自分がアニメ関係者でこんな面白そうな企画を見せられたら、「スタッフに加えてもらえませんか？」と手を挙げてしまいそう。 |
[2008/12/4] |
