| 【おおかみこどもの雨と雪】 東京の大学に通うハナ（主人公）は、ふとしたきっかけから偽学生（学生じゃないのに大学の講義を聴いているヤツ）と知り合い、恋に落ちる。 その男は、実はニホンオオカミの最後の生き残り。人間に変身してひっそりと生き延びていたのだ。 ふたりは結婚して、子供が生まれる。生まれた子供は「オオカミこども」だった。 オオカミである事を隠しつつの子育ては苦闘の連続。都会では無理だと悟り、山奥の古民家に移り住む事に。 しかし家はボロボロ。何をするにも不便な僻地。 野菜を育てようとして畑を作っても、失敗ばかりで収穫できない。こんな事でやっていけるのだろうか？そしてふたりの子供、ユキとアメはどうなるのだろうか？ 観ていて、最初のうちは「かわった雰囲気の映画だなあ・・・」と思っていると、グイグイ引き込まれ、心を持っていかれる。 監督の細田守は、若い頃、ジブリに入りたくて試験を受けたが、宮崎駿監督から「君はジブリに入らない方がいい」というような内容の手紙をもらい、ジブリ入りをあきらめたという。 また、「ハウルの動く城」の監督として抜擢された事もあり、（細田版ハウルは諸般の事情で製作中止になった）ジブリとは因縁浅からぬ細田監督である。 そんな細田監督が、遂にジブリを超えた！と思わせるような傑作を作り出した。それが本作「おおかみこどもの雨と雪」だ。 テーマは「母親」。 昔、俺の親父は、俺の母が夜中に子供に乳をやってるのを見て、「母親ってのは本当に偉ぇもんだなあ・・・」と思った、と言っていた。 俺も、ニョーボの子育てぶりを見て、同じように思った。「母親というのは本当に偉いものだ・・・」 これは、そんな全世界の母親に捧げる家族の物語だ。 アニメとしての特徴は、背景美術にある。背景が芝居をしているのだ。 普通だったら一枚絵の背景でやるところを、背景を分解してＣＧで動かし、「動くハーモニー処理」とでも言うようなやり方をして、舞台の雰囲気を自然に出す事に成功している。 人物は極々オーソドックスな手書きアニメだが、道端の小さな花とか虫とか、水の流れ等をＣＧで丁寧に動かしている。 背景の星空がゆっくり動いていくシーンでは、神秘的な独特の雰囲気を醸し出していて、「う〜〜〜む、新手法！」と唸ってしまった。 あと、子供らがオオカミになって走り回るシーンの躍動感。４つ足動物の動きの作画は難易度が高く、プロでも「やった事がない」という人が多いらしい。そんな中から「挑戦してみたい」と言うアニメーターを集めて描かせたとか。 脚本に関しては、練る作業で話の内容がどんどん変化していくのが普通なのに、この作品の場合、版を重ねてもほとんど揺らがなかったらしい。監督の持っているイメージが非常に明確だったという事のようだ。  １０年に１本出るかどうかという傑作だと断言したい。右の写真は映画館にあった細田監督直筆のサイン。 |
[2012/8/4] |
